山梨が生んだ日本を代表する俳人飯田龍太(一九二○-二○○七年)の生涯と作品世界を紹介する「飯田龍太展」(県立文学館主催、山梨日日新聞社・山梨放送・テレビ山梨共催)が二十七日から、甲府・同館で始まる。生い立ちから、父飯田蛇笏から継承した俳誌「雲母」、生涯に刊行した十句集にいたるまでの句作、選、文章など約三百五十点の展示物を通じて、龍太文学に迫る。
龍太は俳人蛇笏の四男として生まれた。戦後早くから蛇笏が主宰する「雲母」の編集にかかわり、一九五四年に第一句集「百戸の谿(たに)」を刊行。六二年、蛇笏の没後「雲母」主宰を引き継いだ。
作家井伏鱒二を敬愛し、俳壇にとどまらず文壇の中に幅広い交友があったことでも知られる。五七年に現代俳句協会賞、六八年の句集「忘音」で読売文学賞を受賞。八三年に紫綬褒章受章、八四年には日本芸術院会員となった。
今回の企画展は五部構成で、1から4は龍太句を基調に時系列で生涯をたどり、5では井伏との往復書簡を取り上げる。
愛用のカメラ
龍太が生まれた二○年から終戦直前の四四年を対象にした1は、飯田家家相図や、龍太が学んだ当時の境川小学校の様子を展示する。2は戦後から俳人の地位を確立した六八年まで。「雲母」が復刊し、句集「百戸の谿」をはじめ「童眸」「麓の人」「忘音」の刊行で俳人として地位を確立した一方で、兄たち、次女、両親の相次ぐ死と、身内の不幸に見舞われた期間でもあった。
句集や「満月に目をみひらいて花こぶし」(「百戸の谿」所収)などの軸装、額装、愛用のカメラと龍太が撮影した小黒坂の風景写真が見られる。
日記風随想も
六九年から八一年までの十二年間の3は、「忘音」で読売文学賞を受賞し、さらに代表作「一月の川一月の谷の中」が発表された充実期。句集「春の道」「山の木」「涼夜」「今昔」に多くの代表作がならび、随想集も刊行。評論・随想では古典と現代、伝統と前衛の枠をこえ俳壇・文壇の信頼を集めた。読売文学賞受賞の記念として井伏が命名して箱書きした釣りざお「わすれね」や、「白梅のあと紅梅の深空あり」(「山の木」所収)の軸装、句会の指導風景がしのばれる添削原稿、日記風に書かれた随想「山麓日記」原稿などが紹介される。
「山の影」、最後の句集「遲☆(束にニテンシンニュウ)」、そして「雲母」の終刊から死去までが4、5は井伏との交流をテーマとした。同館では「初めての飯田龍太展であり、今回は山梨の風土が生んだ俳人の全体像を見てもらえる内容となっている」と話している。
同展は十一月二十四日まで。会期中、一部資料の入れ替えがある。
企画展のイベント
◇講演会 10月5日午後1時半「龍太俳句の風土」広瀬直人(俳人・俳誌「白露」主宰)
◇座談会 11月1日午後1時半「飯田龍太 その人と文学」宇多喜代子(俳人)飯田秀實(飯田龍太長男)近藤信行(県立文学館館長)
◇講座 10月13日午後1時半「飯田龍太と俳誌『雲母』の歩み」高室有子(同館学芸員)、11月13日午後1時半「飯田龍太句集『麓の人』の俳句」井上康明(同館学芸課長)
=いずれも会場は甲府・県立文学館、入場無料。問い合わせ・申し込みは同館、電話055(235)8080。
【山梨日日新聞社 9月19日掲載】